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2019年4月7日日曜日

『VICE』アメリカを裏で操ったディック・チェイニーの動機とは??

event_note4月 07, 2019 editBy kphoto0823


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■一言感想
アダム・マッケイ監督のコメディー手腕を存分に生かした政治批判が楽しく面白いけど、、重い!

■好き度
★★★

ジョージブッシュの副大統領ディック・チェイニーの話。
時に冷徹であり、時に大胆。

予告編、レビューなんかを見ていると、ジョージ・W・ブッシュ大統領の影に隠れた影の支配者という印象が強くなりますが、どうもその行動原理が支配したい!という欲求とは少し違うように見える。

この映画ではチェイニーの趣味である"釣り"が一つのテーマになっています。釣った魚を見せびらかしたり、魚への愛情があるわけではありません。

"釣り"="上手くやること"

であり、それは政治、仕事に対する姿勢でも同じ。

チェイニーが酒浸りで電気工事をしていた若かりし頃、奥さんに対して"君を失望させたくない"と一念発起して地位を求めたモチベーションは、ジョージ・W・ブッシュを目の前にして、副大統領になることを決めた瞬間の気持ちとは異なるように思います。

副大統領の権利を大統領並みにするには…
石油利権を獲得するためには…
大統領を当選させるには…

結果そのものより、結果を得るための布石を打ち獲物を狩ることそのものを楽しむ男。国民、大統領の心理を操るそのあまりに大胆な手腕でイラク戦争を引き起こすに至ったディック・チェイニー話。でも、チェイニー本人に無許可で製作!


■コメディー演出が素晴らしいアダム・マッケイ監督

本作は『マネー・ショート 華麗なる大逆転』に似た構造で、史実を元にストーリーを展開するのですが、途中途中に観客に直接語りかけるいわゆる"第4の壁"を超える演出を用いて、話が鈍重になりそうなときにナレーターのメタ視点でコメディー要素を交えて楽しませてくれます。



本作でも悪趣味なジョーク、皮肉が随所に使われていますが、コメディー映画『Anchorman』シリーズ(俺たちニュースキャスター)の監督でもあり、こちらもシュールギャグ連発の笑える作品です。本作に出演しているスティーヴ・カレルの演技も見もの。



■アカデミー賞を受賞!クリスチャンベールのメイクアップ
『バットマン』のイメージ強い方もおおいかとおもいますが、太りっぷりがすごい。そして、体重の増減が半端じゃない。まとめてるサイトがあったので、引用すると以下の通り。(FRONTROW:より)

『マシニスト』(2004):29㎏減量 (58kig)
『バットマン ビギンズ』(2005):45㎏増量
『戦場からの脱出』(2006):30㎏減量
『ダークナイト』(2008):30㎏増量
『ザ・ファイター』(2010):14㎏減量
『アメリカン・ハッスル』(2014):20㎏増量



本作では18kgの増量、そして第91回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した特殊メイクがすごすぎる。ポスターの老年期のディック・チェイニーなんてもともとのクリスチャン・ベールの面影がほとんどない。別人!!

史実をできるだけ脚色せずに伝えた作品のように見えますが、見た人の心にどう映るか、エンドロール直前まで見て頂くと、監督の皮肉交じりなラストに唸るはず。